3月3日(土)から6月13日(水)まで今泉記念館アートステーションにて企画展「クール&グラマラス!ウォーホルとフランス絵画展」が開催されます。
本展の主役はポップ・アートの巨匠アンディ・ウォーホルの代表作『マリリン』です。カールされたブロンドの髪、セクシーなたれ目に口元のほくろ、一目でマリリン・モンローだと分かるこの作品。「ウォーホルは知らなくても、この作品は知っている」「この作品でマリリン・モンローを知った」という方も大勢いるほど世界的に有名な作品です。
ウォーホルがマリリン・モンローの作品の制作を始めたのは1962年、ポップ・アートを手掛けるようになったばかりの34歳の頃。崇高な絵画にスキャンダラスなハリウッド女優を用いるという大胆さで、美術業界に大きな衝撃を与えた問題作です。半世紀を過ぎた今でも新鮮に映るこの作品が、当時与えた衝撃は図りしれません。
病弱でひきこもりがちだった少年ウォーホルは、『グラマー』誌などの華やかな女性誌を切り取って壁に貼ったり、ハリウッドスターの写真やサインをコレクションすることが趣味でした。そんな彼にとってマリリン・モンローは憧れの存在であり大ファンだったといいます。そんな彼女の突然死を知るとウォーホルは映画宣伝用のスチル写真をもとに、マリリン・モンローの作品を制作します。その後も、シルクスクリーンの技法で色を変え、同じデザインのマリリン・モンローを「ファクトリー(工場の意味)」と名付けたアトリエで量産します。
彼にとって彼女は創作意欲をかきたてるミューズだったのか、それとも彼にとっては他のモチーフと同様、彼女も20世紀のアメリカを象徴する時代のアイコンに過ぎなかったのか真意は分かりません。大好きだった女優の死に心を痛め制作した、マリリン・モンローに贈るレクイエム、熱心なキリスト教徒だったウォーホルにとってのイコンなど、色々な解釈があるこの作品。
奇抜な色を施したり、色を反転させ写真のネガのように見せたりと同じデザインでも変化に富んだ作品『マリリン・モンロー』。その魅力はなんといっても謎めいたほほえみにあるのではないでしょうか。36歳という若さで謎の死を遂げた彼女が、ウォーホルの作品の中でよりスキャンダラスでミステリアスにほほえんでいます。
本展で展示する『マリリン』はモノクロの抑えた色調に、写真のネガのような反転した色が映える印象的な作品です。よく見ると、ほほえみの中にも歯に力が入っており緊張感が感じられます。彼女の死を表現する作品、そうかも知れません。しかし、強いメッセージ性が感じられ、今なお人々を魅了するこの作品には死だけではない、もっと違う意味合いが隠れているように感じられます。
「将来、誰でも15分は世界的な有名人になれるだろう」という言葉を残したウォーホル。もしかすると、大好きだった女優の輝いていた瞬間を心に焼き付け、また同じ作品を量産することで、ウォーホルにとってはその儚い時間を引き延ばす作業だったのかもしれません。
この機会にぜひウォーホルの『マリリン』をご高覧ください。
2018/3/2
【ウォーホル『マリリン』からの誘惑】