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 2017/6/25
【シャガールだけの青「シャガール・ブルー」の世界】

生誕130年記念 シャガール・ブルーの世界展

 11月5日(日)まで今泉記念館アートステーションにて企画展「生誕130年記念 シャガール・ブルーの世界展」が開催されます。

 シャガールはピカソと並び20世紀を代表する巨匠画家で、ピカソと同様にフランスで活躍しました。二人は同じ時代を生きたライバルでもあり、シャガールはピカソによって創始されたキュピスムに影響された時期もあります。実は毒舌家だったシャガールはピカソに対して厳しい批評をしていますが、二人は仲が悪かったわけではないようです。

 シャガールはピカソのパトロンでもあった画商ヴォラールに依頼されて、サーカスをテーマとした版画集を制作します。熱烈なサーカス好きだったヴォラールはシャガールのために、頻繁にサーカスの席を予約したといいます。また、幼少時シャガールの故郷にサーカスが来ると、その夢の世界に彼は魅了されていました。

 シャガールといえば甘美な夢の世界を想い浮かべる人が多いでしょう。妻ベラを一途に愛したことから「愛の画家」としても有名です。また、パリで当時最先端の芸術に触れたことで開花した華やかな色彩から「色彩の魔術師」とも呼ばれています。一見すると明るい人生に思えますが、ユダヤの家庭に生まれたという出自、故国ロシアの革命、第一次世界大戦、第二次世界大戦という二つの世界大戦を経験、ナチスのユダヤ人迫害から逃れるためにアメリカへ亡命、終戦を待つことなく最愛のベラを感染症により亡くしてしまいます。そして、ユダヤ人虐殺やベラとの別れといった悲しみを乗り越え、フランスに戻りフランス国籍を取得、再婚するなど激動の時代を生きた波乱の生涯でした。

 シャガールの言葉です。
「サーカスは最も悲しいドラマだと私には思われる。何世紀にもわたって、それは人々の娯楽や喜びを探し求めた者の、このうえもない鋭い叫びであった」(サンケイ1990年2月4日掲載)
「わたしにとって、サーカスは、小さな世界のように過ぎ行き、溶けていく魔術的な見世物である。騒がしいサーカスがあり、隠れた深さをもつサーカスがある」「すべての演劇的催物のなかで、もっとも悲劇的である」(サンケイ1989年4月9日掲載)
「私は、一生の間にグロテスクなサーカスを見てきた。あの男(ヒトラー)は世界を恐怖される轟音をひびかせる。理想的な世界にはつながらない革命は、私はサーカスのようだと思う。私は悲しみの世界から逃げ、物乞い、慈悲のために物乞い、サーカスの馬のような豪華な姿で、これらすべての厄介な思考や悲しみの感情を隠し、ピエロのようにパフォーマンスし人々を魅了したい」(1966年)

 本展のテーマである「シャガール・ブルー」とは、シャガールが使う独特の青色のことを言います。シャガールにしか出せない色と言われ、神秘的でとても印象的な青色。社会的混乱や時代背景が彼の制作に大きく影響したことは確かでしょう。しかし、シャガール・ブルーは人生の悲しみ、苦しみ、喜び…全てを優しく包み込んでくれる深い慈愛を感じることができます。そこには、彼の普遍的なテーマ、ユダヤ人としての誇り、妻への愛、故郷への想いが常にあったからではないでしょうか。世界中どこにいても彼が描いたのは恋人、結婚といった愛、生まれ育った村の風景や幼少時の思い出といった主題を、生涯を通じて繰り返し描いています。

 本展ではここでしか観ることのできないシャガールの油彩画とテンペラ画を展示致します。油彩画は重厚感ある深い色彩のシャガール・ブルーを、テンペラ画は塗り立てのような鮮やかな発色の輝くようなシャガール・ブルーをぜひご覧下さい。

 
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